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講義中の挙手をやめてスマホ投票 ~本日の話題~

★本日の話題★
学校の授業でも、セミナー会場でも、よく見かける『○○の人!』と言われて挙手をする簡便な投票や意思表示の場面の改善策について取り上げます。




挙手が恐怖!?

 授業中に先生が『これを答えられる人』と問うのは『普通』と思っていましたが、反対に『これを答えられない子は誰だ?』ということを可視化することにもなってしまうので、教育としては良くない可能性が指摘されています。

 『これを答えたい人』と問われれば『答えは知っているが、答えたくない』という選択ができるので、こちらの問い方が今の時代には合っているようです。

 人前で挙手をする、指されて発表するということがストレスだという人は少なくありません。
 大人であれば『ストレス』という言葉に置き換えられますが、子供ではなぜ身体が震えるのか、心臓がバクバクいうのかわからないので、単に恐怖としか捉えられなくなります。
 授業の挙手が嫌で不登校という人も居るようですが、まだまだ改善されていないようです。

【参考】ベネッセ:授業での挙手は生徒のためなのか, みんなの探求ライブラリ




挙手はやめられない

 ある自治体の教育委員会が公表している資料に『挙手で回答をお願いします』とした上で、いじめであるか否かの個人的判断を聴衆の面前で示すように促しています。

 間違った回答をした人には、研修が終わるまでに正しい答えを導き出して貰おうという狙いがあると思いますが、もしも100人のホールで1人だけ違う方に手を挙げていたらどうでしょう。

 『多元的無知』という言葉がありますが、数学のように答えが1つの場合は白黒がハッキリしますが、教育やいじめについては答えが流動的であるため、いじめのボーダーラインが挙手による多数決で決まるようでは問題があると思います。

 教育委員会の資料では『こんな問題もわからないの』と言われたAさんがショックを受けた事例を挙げていますが、まさにこのQ1がいじめであるかどうかを回答できない教員に対し無言で『これがいじめかどうかもわからないの』という圧力がかかることは容易に想像がつきます。

【参考】中津市教育委員会学校教育課支援係:平成29年度管内いじめ・不登校対策協議会 いじめ事案における初期対応において校内で共通理解しておくこと

【参考】京都教育大学教育実践研究紀要:教師はなぜ授業中の挙手を好むのか -教師の思惑、子どもの都合-




挙手≒ハラスメント!?

 昭和の時代までは『男と女』のような性別二元性が『普通』でしたが、今では姓自認や同性愛など多様性が認められる社会となり、そもそも性別を問う必要がある場面が変わってきました。

 医療の現場では解剖学的、生理学的に性別を判断しなければ処置具や処置方法が変わることがあるので性別の申告は重要です。特に妊娠の可能性有無については『この抗癌剤を使うと副作用で….』のような説明が抜け落ちる恐れもあるので重要です。

 定期券はどうでしょうか。
 昔の紙の定期券でも女性は赤い線が引かれ、自動改札化されても女性が通れば赤ランプが付くといった仕組みが残っています。
 家族の定期券を使って乗降させないようにという運賃防護策としては有効ですが『あの見た目で女性というのはおかしい』と思って駅員が声掛けできるような世の中ではないと思いますので、男女の申告欄はいずれ無くなるのではないかと思います。

 講義中に『女性は手を挙げて』とラフに言ったつもりでも、これがハラスメントにつながる可能性はあります。

 講義中に『トイレ休憩が欲しい人』という質問は受講者への配慮だと思いますが、判断が難しくなりそうです。休憩した方が良いと気づいたのであれば、休憩をはさんでしまった方が良いかもしれません。

 もちろん『前科がある人』『風俗でバイトしたことがある人』などの質問は公衆の面前でなくてもすべき質問ではありません。

 多数が居る場面で、挙手で回答できるような質問は減りつつあります。




挙手は数が不正確

 『賛成の人は拍手を』というのは非常に不正確ですが、いまだに多くの場で行われています。

 『賛成の人は挙手を』というのも、20人くらいの会議であれば数の誤認は少ないと思いますし、過半数のギリギリのときは何度か数え直しもできると思います。

 体育館で生徒総会を開き、800人の生徒に挙手を求めた場合にはどうでしょうか。『だいたい3分の2』だから過半数という議長決裁で議事が進行しそうですが、それで良いのかどうかはあまり議論されません。




クリッカー

 クリッカーとは、いくつかのボタンが付いたリモコンのような装置で、押されたボタンの数がホスト(親機)に集められます。

 最後に見たデバイスは名刺サイズくらい、カード型電卓がそのくらいのサイズで存在していたと思います。

※.上図は香川大学のウェブサイトをそのまま参照表示しているためリンク切れの場合はご容赦ください。

【参考】香川大学:クリッカーを教育・研究に役立てよう




いまはスマホ

 いま『クリッカー』の購入申請をしても大学等が買うとは思えません。

 時代はスマホなどの情報端末の活用に傾いています。
 すでに学生証はスマホと連動し、講義の出欠はスマホで管理されている大学が多くあります。

 講義中のアンケートもスマホでできます。

 専用アプリ不要で、ブラウザを起動してアンケートに答えるタイプのものであれば、事前準備は要りませんし、学校支給のタブレット等であってもアプリの新規インストール申請などもせずに済みます。


 このシステムの原形は『安否確認システム』です。

 元々、安否確認システムを使うための訓練をするのが手間であり、年1回では身に付かないだろうということで、平時利用するためにアンケートシステムが構築されました。

 上下の画像を比べて頂ければわかりますが、二者択一であれば安否もYes/Noも差がありません。

 すなわち、講義で普段からYes/Noを回答していれば、いざというときの安否確認の操作も迷わずできるということになります。




ARS

 このようなスマホを使ったクリッカーを Audience Response System と呼びます。

 このARSの集計はパソコンで行います。
 ウェブシステムとして完結するタイプの製品も多くありますが、今回試用している製品は安否確認システムであるためウェブへの依存度が低い製品です。

 見方を変えると、講師がネット接続するのはデータを受信する短い間だけで、グラフ表示などはローカルでできるということになります。


 ARSではグラフのような視覚的にわかりやすい表現で集計することが一般的です。もちろん、数値データも出力されます。




ウェビナー

 新社会では常態化したZoomなどのウェビナー(ウェブセミナー)でもARSは使えます。

 受講者アンケートは従来のような挙手ではなく、スマホ経由で実施できます。パソコン画面からも回答可能です。

 集計結果は講師のパソコンで表示できますが、この安否確認システムの場合ですとグラフ表示を画像データとして出力すると同時に、ウェブブラウザでも表示します。

 これにより、講師のウェブブラウザを画面共有しておくだけで集計直後に結果を共有することができます。

 新しい集計をすれば、ブラウザにタブが増えるので、画面共有しているブラウザのタブを切り替えるだけで聴講者に集計結果を共有することができます。

 このブラウザでの表示はローカルで完結しているので、ウェブサーバなどの設定は要りません。




講師の質を向上

 講師にとって、講義の内容の充実が聴講者からの評価にもつながります。

 受け身で聴講しているよりも、参加型の方が身に付くことが多いことはよく知られているので、なるべく聴衆を巻き込んだ講義をしようと試みる講師は少なくありません。

 その常套手段であった挙手は、時代とともにやりづらい方法になりましたが、発達したICTを活用すれば、本来やりたかった参加型講義は実践できます。

 より良い講義を目指し、講義の質を高め、聴講者からは講師の質が高いと評価されるためにはARSは重要なアイテムだと思います。




無料と有料

 とりあえず使ってみようという場合は、Vectorのサイトから無料でダウンロードできます。

 ただし、機能制限付きなので、講義中に手間がかかる可能性があります。


 有償版であれば、機能制限なく使えます。

 本来は安否確認システムなので、調達するのは安否確認システムになりますが、その中のARS機能だけを使えば、講義に対応できます。

 この記事を書いている時点での最安値は30か月版で30,000円の商品、月額換算すると1,000円/月です。
 商標登録記念特価ということなので、いずれは無くなるキャンペーン価格ですが、月千円で講師の質を高く評価されるのであれば使う価値はあるかなと思います。




おわりに

 今回は時代とともに変遷する挙手に対する考え方、そこから生まれてしまういじめなどについて考えました。

 解決策として挙げられたARSですが、便利に使うことで挙手に優る結果を得られそうです。

 筆者は講師を務めさせて頂く機会がありますので、活用していきたいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

解決

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