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BCP・災害対策

『火災から生命を守る新しい指針への対応』 -今日の課題-

★今日の課題★
火災から身を守る新しい指針への対応
~京アニ放火事件を踏まえた防災~




火災から命の守る避難
京都市消防局

動画集の配信

 京都市は人口約150万人、2019年の観光客数5,352万人、大学も多くあり昼間人口が曜日を問わず多い都市です。

 その京都市を守る消防局が今夏、避難訓練用の動画を配信しました。

 この動画の素晴らしい点は実写でわかりやすいという事だけでなく『図上訓練』(Fire Image Game)まで動画で紹介している点だと思っています。

【参考】京都市: 令和元年京都観光総合調査について

【参考】京都市消防局: 火災から命を守る避難

※.YouTubeへのリンクはページ下方で紹介しています。



2019年夏・放火事件

 昨年、京都アニメーションという企業のビルで放火による大規模な火災が発生し、36人が死亡、33人が負傷、建物は取り壊されるといった大きな危害が発生した事件がありました。

 被害に遭われた皆さんに何の落ち度もないこの事件では、どうすれば生命を落とさずに居られたのか、大やけどを負わずに居られたのか、助かった方々は偶然だったのか、多方面から意見や提案が出されています。



新知見・窓を開ける

 この火災のあった地元京都市の消防局では今年3月、火災の避難時に窓を開ける行動も含めた避難指針を発表しました。

 『窓から屋外へ逃れる手段の確保』という点は、従来の『延焼防止のため窓を閉めて避難』という考え方を大きく変えるものでした。

【参照】京都市消防局: 火災から命を守る避難の指針の策定について(2020年3月18日)



人命危険レベル3段階

 京都市消防局では指針の中で3つの危険レベルを示しています。

レベル1…階段の使用が可能

レベル2…階段の使用ができず、階段以外から避難

レベル3…避難者が煙に覆われた危機的状況

 上記レベル1では階段を下りて行けば良いので窓は閉めたままで大丈夫です。

 レベル2になると常套手段が使えないので、緊急回避的な非常手段として『窓を開けて避難』が開始されます。

 京都アニメーションの火災ではトイレに逃げ込んで外部から救出されて助かったという人も居ました。一旦はどこかへ退避して内外の様子を窺い、可能であれば外へ助けを求めるという選択肢を想定できれいれば、行動に移せるだろうという消防局の考えが伝わってきます。




習得・実装

する・できる

 貴重な教訓を得た京都市消防局がせっか『こういう方法があります』『こうしましょう』と情報提供をしてくださっているのでそれを自らのものにする必要があります。

 着衣着火時のストップ・ドロップ&ロールは実践できるかわかりませんが、他の避難に関することは、戦術として知っておくだけでも価値があると思います。



図上演習(FIG: Fire Image Game)

 軍事的なところでは兵棋(へいぎ)訓練などの名称でも行われている『図上訓練』『図上演習』などを京都市消防局からもお薦めされています。

 よくある避難訓練では、決められたルートから避難することを実施して終わり、という事が多いと思います。
 一部の代表者だけ滑り台のようなもので降りてくるデモンストレーションのような事をして満足する、といった感じです。

 図上演習では、あの手この手を考えます。

 『もし階段が全部塞がっていたら』『もし廊下が歩ける状態ではなかったら』『ドアが壊れて開かなかったら』といったことを図上演習の中で考えていきます。

図上演習は2班

 私が図上演習をする場合『統制班』(コントロール班)と『演習班』(プレイヤー班)に分かれてもらいます。

 答えが分からない問題を出すのが統制班の仕事なので、統制班にはある程度のスキルが必要になります。

 統制班はときにファシリテーターにもなります。
 プレイヤーの1人が『こうしたら良い』と言った事に全員が流されて次のアイディアが出てこない場合があるので、次の意見を出させるための新たな条件設定や、手法のヒントを出します。

 例えば『映画007ならどう切り抜けると思いますか?』と振ると『ワイヤーを伝って隣のビルへ移る』という答えが出てきたりします。
 普通ではあり得ない方法かもしれませんが、生死を分けるときにもしかすると実行する人が居るかもしれません。

 余談ですが、私は電気工事職人として電線を伝って建物から建物へと移動したことがあります。
 プロですので感電の心配が無いようにしていますが、この方法で生命が助かるならば、決して潰してはいけない意見です。

 図上演習では自由な発想が大切になります。



できる環境をつくる

 京都市消防局のビデオの中では、ドアの隙間をテープでふさぐシーンが出てきますが、テープが無ければできません。

 近年はAEDが普及して『AEDさえあれば!』というシーンで活用されていますが、モノがあるか否かで結果が大きく変わることがあります。

 図上演習で出た意見のうち、道具さえあればといった環境依存型のアイディアは、なるべく環境を寄せていく努力が必要になります。



GOAとAPOLLO 13

 GOAとはGoal-oriented action、目標志向型の行動を指しています。

 結果を得るためなら手段を選ばないといえば極端ですが、あまり常識的ではない行動であっても、非常時には仕方ないので結果を優先させましょうという意味合いで研修会などでお話しさせて頂いております。

 この考え方がよく出ている映画がトム・ハンクスさんの『アポロ13』です。

 危機的状況の中で、色々な物を使って課題を解決していく姿がGOAを感じます。




京都市消防局動画集


1.火災から命を守る避難
【総集編】



2.A.火災から命を守る避難
避難行動シミュレーション
【階段避難編】(2分16秒)


2.B.火災から命を守る避難
避難行動シミュレーション
【避難器具使用編】(2分25秒)


2.C.火災から命を守る避難
避難行動シミュレーション
【ぶら下がり避難編】(2分50秒)


2.D.火災から命を守る避難
避難行動シミュレーション
【一時避難スペース編】(3分29秒)



3.火災から命を守る避難
【サバイバル避難編】(2分53秒)



4.火災から命を守る避難
【図上訓練編】(2分5秒)
(FIG: Fire Image Game)



5.火災から命を守る避難
7つの指針と11の知恵(10分13秒)




 知見の広がる話題提供が京都市消防局からなされました。

 動画は今の社会には欠かせないアイテムですので、動画化されていることも魅力的です。

 あとは受け手である我々が、しっかり理解して身に付けて行く必要があるなと感じました。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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